Eco-QCチェックリスト

チェックリスト-1:エネルギー
エネルギーコストは企業経営・収益性に大きな影響を持つため、エネルギー消費の実態を管理するともに、製造工程での効率性改善のためのアイデアを見つける。
  1. 企画・購買・人事等の製造部門以外の社内スタッフ及び社外の専門家を含む調査グループを設置
  2. 代替エネルギーの可能性や省エネ技術等の情報を収集し、工程別エネルギー消費実態との比較検討を実施
  3. 短期的省エネ技術の導入による財政的節約可能性を検討の上、職場での小さな改善策の積み重ねを実施
  4. 長期的省エネ対策として、生産量・労働時間あたりのエネルギー消費量の少ない製造工程の見直しに着手
  5. 自社製品の消費・利用・メンテナンス・廃棄にかかるエネルギー消費量を推計し、トータルの消費量を算定
  6. 必要であれば、トータルなエネルギー効率に優れた製品開発の方向性を検討し、社内の製造部門へ提案
チェックリスト-2:原材料
原材料の選択とその調達方法は、コスト削減の柱になるともに、材料供給業者・商社等を通じて、国際的な環境保全にも大きな影響を与えることになる。
  1. 製造工程や製品自体が求める原材料特性・機能を整理した上で、輸入原産地と採取状況、材料の危険性や環境破壊性等の情報を収集
  2. 材料の使用・加工過程で発生する有害汚染物質の排出量/生産量を算出し、排出規制の現状と比較検討
  3. 代替原材料をリストアップし、採取時の環境負荷・輸送コストや、製造工程における環境保全コスト・労働やエネルギーの節約度等を比較検討
  4. 製造現場での貯蔵方法の改善、製造器具の高度化、回収リサイクルの充実、輸送方法の変更等により、原材料利用の効率化対策と環境負荷の削減対策を実施
  5. 長期的には、原材料の供給業者等との交渉を通じて、持続可能で、環境負荷の少ない原料調達方策を検討
  6. 危険物質の使用停止や代替原材料への転換を図り、必要な場合には、代替物質の開発を社内外のエンジニアリング部門や研究開発部門に依頼
チェックリスト-3:製品デザインと製品開発
根本的な対応として、製品デザインや開発の段階から、環境影響と収益性の両面に配慮した検討が求められる。
  1. 自社製品のカタログを作成し、新技術・代替材料の採用や、部品の標準化等によって環境保全型デザインに転換可能な製品をリストアップ
  2. 耐用年数、モデルチェンジ、定番商品化等の視点から、メンテナンスと耐久性を考慮した製品をデザイン
  3. リサイクル、省資源の視点から、効率的かつ持続可能な原材料利用を可能にする商品のデザイン
  4. 計算機シミュレーションや人間工学的知見を活用し、利用しやすい製品デザインの採用
  5. 自社の持つ技術シーズを生かした先端的な製品の開発。同時に希少資源や生物種を利用する製品には十分配慮したエコロジー思想を表明するような製品群を企画
  6. パッケージングでは、回収・リサイクル・ 分解可能性、輸送・貯蔵の容易性等に配慮
チェックリスト-4:製造・生産工程
製品の製造・生産工程の見直しは、その過程で生み出される廃棄物を減少させるともに、効率的な資源利用を通じて、製造コストの削減につながる。
  1. 現在の製造工程と技術を調査し、現行の環境保全基準を満足あるいはより厳しい基準をも満たすことを確認
  2. 製造段階での原材料特性の向上、有害廃棄物の抑制、エネルギー効率の向上に向けて短期対策を実施
  3. 危険物質の代替、新技術の導入、環境保全装置の高度化等で、継続的な生産プロセスの見直し・再設計
  4. 有害物質の回収、廃棄物のリサイクル、 排熱利用など生産工程におけるクローズドシステムの高度化
チェックリスト-5:リサイクル
リサイクル市場の確立に向けて、積極的に自社製品の見直し・リサイクル部品の採用を行うともに、政策的側面からも提案・提言を行う。
  1. リサイクル部品への転換が可能な製品をリストアップし、転換時のコスト・ベネフィットを明示
  2. 現行の処分方法による汚染・処理コスト・エネルギー等の消費を比較検討し、リサイクル需要を推定
  3. 社内外でのリサイクルを可能とする製品デザインを実施し、自社製品の再資源化率を向上
  4. 販売網やリサイクル業者との交渉を通じて、リサイクル市場の確立を支援
チェックリスト-6:マーケテイングと販売
自社製品を消費者に届ける段階であるマーケテイングと販売においては、イメージや外観のみでなく、エコロジカルな商品価値を、確実に伝えることが重要である。
  1. エコマークの取得や、過剰包装やその素材についてパッケージデザインの再検討を実施
  2. 現行の販売体制の見直し、アフターサービス・相談サービスの充実、広告・宣伝メディアと内容の見直し
  3. 価格にしめる環境コストや環境保全性等の製品の環境価値に関する情報を卸売り業者や消費者に提供
  4. 環境コストの小さい輸送システムの選択を行い、流通システムを再検討
  5. エコロジカルな商品価値をより評価するマーケット・セグメントを中心とするマーケテイング・販売戦略の策定と実施
チェックリスト-7:廃棄物・排出物
生産活動から生ずる産業廃棄物、さらに企業活動に伴う一般廃棄物・排出物の総量を削減していく。
  1. 自社からの廃棄物・排出物の発生状況とその発生起源を把握し、それらの処理の現状を確認
  2. 副産物、とくに有害物質の毒性・残留期間・処理問題などの情報を収集し、廃棄物対策の優先順位付けを実施
  3. 騒音・ガス・微粒子・悪臭等を含めた排出物と、それを生む工程を明らかにし、排出制御方策を検討
  4. 廃棄物と排出物の除去・削減をめざし、他の生産方法や無害化プロセス等の採用による代替案を策定
  5. 除去・削減成果、実施の容易さ、財政的コストを比較検討し、実施すべき代替案を選択
  6. 実現のための行動計画を策定し、廃棄物・排出物の総量削減効果を継続的モニタリング
チェックリスト-8:使用・廃棄
製品を提供する企業として、 トータルの製品ライフサイクルの責任を持つ必要がある。製品を最終消費者が使用し最終的には廃棄する場合や、部品・中間財として他の企業が購入する場合のチェックが必要である。
  1. 自社製品が使用される場合の環境負荷の程度や、不適切な使用による環境被害の可能性があるか否か、等に関する情報の明示
  2. 製品供給者として、推奨する利用方法や廃棄方法等に関する十分な情報提供とアフターサービス
  3. 消費者がリサイクルしやすいような製品デザインや、消費者が行う廃棄物処理の支援(買い取りなど)の検討
チェックリスト-9:制度・政策
環境保全対策に対する免税措置や助成金の利用など、 ECO-QCの実現に向けて、自治体や政府に働きかけていくことも重要になっている。
  1. 現行の制度を有効に利用し、環境保全型製品開発に対する投資戦略の全社的な計画・承認
  2. 政府・自治体等の環境政策に関する継続的情報収集と、環境投資を支援するような政策提言・ロビー活動
  3. 環境関連のコンサルタントや環境保護団体等との情報交換や、各種プロジェクトへの助成
[引用文献]
  1. 環境自律型企業の構築と ECO-QC」 日本総合研究所 Japan Research Review 1994 年 1 月号
  2. Eco-QC Management for the New Generation Company」 日本総合研究所 JAPAN RESEARCH QUARTERY Spring 1994
  3. 環境監査とわが国企業の対応」 オーム社 OHM 1994年6月号
以上
「日本環境共生学会 2009年度 学術大会」基調講演資料はこちら